大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)2370号 判決

被告人 串田一

〔抄 録〕

記録によれば本件は、先づ昭和二十八年二月十日附起訴状をもつて被告人が信越購買協力会理事、次いで同会々長として在職中大蔵大臣の免許を受けないで同協会の業務に関し昭和二十六年八月十九日頃から同年九月三十日までの間、諸物品の割賦販売を行うものの如く装つてその実一定の期間を定め、その中途又は満了のときにおいて一定の金額を給付することを約して永野仙吉外延べ四十七名から掛金合計四十万四千七百九十円を受け入れ、もつて相互銀行業務をなしたとの事実につき相互銀行法違反罪(罰条、同法第二十三条・第二十七条)として原審裁判所に公訴を提起せられ次いで同年三月四日附起訴状をもつて、被告人が右会長として日賦分割支払購入事業に従事中、昭和二十六年九月に至つて同会の収支状態が悪化し、以後加入者に対して規約に基ずく支払をなすことが出来なくなつたことを知り乍ら、新に加入者を募集して掛金を騙取しようと企て、同年十月一日末武正雄に対して支払の意思がないのに、あるように装つて会に加入させ掛金を納めるときは、規約によつて金員を支払う旨申し向けて同人をその旨誤信させ同日から昭和二十七年七月七日頃迄の間四十一回に亘り、同人宅で同人から合計金八千四百三十円の交付を受けてこれを騙取した外、昭和二十六年十月一日頃から昭和二十七年七月三十日頃迄の間松井磯次郎外延べ九十六名から同様の手段方法により前後三千七百二十四回に亘り合計金八十四万三千七百九十円の交付を受けてこれ(総計金八十五万二千二百二十円)を騙取したとの事実につき詐欺罪(罰条刑法第二百四十六条第一項)として同裁判所相川支部に公訴を提起せられ原審裁判所において両者を併合して公判審理中、検察官において、後の公訴事実の訴因を、被告人が右信越購買協力会長在職中、大蔵大臣の免許を受けないで右協力会の業務に関し昭和二十六年十月一日末武正雄と諸物品の割賦販売を行うものの如く装つてその実三百日の期間を定め、その満了の時において九千三百円を給付することを約して右期間内に掛金合計八千四百三十円を受入れた外、同年十月一日より昭和二十七年七月三十日頃迄の間松井磯次郎外延べ九十六名より掛金合計八十四万三千七百九十円を受入れ(総計金八十五万二千二百二十円)、もつて相互銀行業を営んだものであるとの事実に、罪名、罰条を相互銀行法違反、同法第三条、第二十三条、第二十七条にそれぞれ選択的に変更(訴因及び罰条の択一的追加と解する)する旨請求したところ、原審は右訴因、罰条の変更を許可する旨決定して審理を続行した結果、昭和二十八年二月十日附起訴状記載の公訴事実たる相互銀行法違反の点についてはその訴因及び罰条につき被告人を有罪と認め、同年三月四日附起訴状記載の公訴事実たる詐欺の点及び択一的追加にかかる相互銀行法違反の点については、後者の訴因及び罰条につき被告人を有罪と認め、且つ、両者を包括して相互銀行法第二十三条第三条に該当する一罪を構成するものとして処断したものであることが明らかである。よつて原審が右訴因罰条の追加は、公訴事実の同一性を害しない限度においてこれを許すべきものであることは言うまでもないところ、右昭和二十八年三月四日附起訴状記載の本来の訴因罰条と択一的追加にかかる訴因罰条とは、両者いずれも被告人が信越購買協力会理事、次いで同会会長として在職中、昭和二十六年十月一日から昭和二十七年七月三十日頃迄の間、末武正雄ほか延べ九十七名から多数回に亘り合計金八十五万二千二百二十円を不法に受領したという行為に関するものである点において基本的事実関係を全く同一にし、ただ右金員受領の主観的意図に関し、前者はこれを、後日金員支払の意思なくして掛金名義のもとに騙取した詐欺の所為と見るのに対し、後者はこれを、一定時間積立の上、後日給付する意思をもつて真実掛金として受領した無免許相互銀行営業の所為と見るの一点において相違するのみであつて客観的事実は全然同じなのであるから、右本来の訴因、罰条に対し、択一的追加にかかる後の訴因、罰条は、毫も公訴事実の同一性を害するところがないものというべきであつて、従つて、原審が、検察官の請求にかかる右訴因、罰条の択一的追加を許可したのは洵に正当であるといわねばならない。その他記録に徴するも原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反あるを認め難い。論旨は理由がない。

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